デンマーク・ロイヤル・バレエ「ロミオとジュリエット」

観てきました。本日の配役はこちら
ノイマイヤー版のロミ&ジュリは寝室のパ・ド・ドゥをアッツォーニ&ペッシュで観たことがあるけど、あれだけだと正直、良くわかりませんでした。やっぱり全幕で観ないとね〜。とても素晴らしかったです。デンマーク・ロイヤルもナポリだけだと思っちゃうと大変な過ちを犯すわ。作品の力が大きいのでしょうけど、カンパニーの皆さん躍り込んでいるんでしょうね。よくまとまっていて作品の世界を表現していました。大人数でみんな身体大きいし東京文化会館の舞台がとても狭く感じました。
ついロミ&ジュリだとマクミラン版と比較しちゃって、途中まで頭の中で変換作業をしてましたが、気が付いたらいつの間にか舞台上のことだけに集中してました。ノイマイヤー版はロレンツ神父(配役表には僧ローレンス、とあります)の登場シーンが多く設定も年齢が若くてロミオの親友となっています。観ていて、ノイマイヤーはこのローレンスに自分を投影したのかな、と何となく思いました。マキューシオとティボルトの喧嘩のシーンでもローレンスは街の雑踏の中にいてことの成り行きを見つめています。若い二人の恋に大きく係わって、最後には自ら協力したことによって二人に死を選ばせてしまうという大変な役回りです。ローレンスが必死になってロミオを探しでいるシーンも切なかったです。
ロミオとジュリエットの物語は実際たった4,5日の間に起こった出来事だといいます。まさにこのバレエも流れる川か吹きすさぶ風のように、音楽とともに絶え間ないダンスと人々のざわめきの中で展開して行きます。ただ少し趣が違うのがローレンスの薬草つみの風情かな。素足のままで静かに歩を進めるつま先が若者の焦燥とは別次元のところにあって、そのつま先の下にはヴェローナの路上や草原ではなく、おそらく神父さまの祈りの世界があるように感じました。
主役二人は、そうですねー。ロミオのセバスティアン・クロボーはなかなか良かったです。うっとりって程の容姿ではなかったけど、やんちゃな感じや一途に恋する男の子の無謀さや突き抜けていくエネルギーが表現されていたと思います。ジュリエット役の子はイマイチだったかな。もちょっと上半身に柔らかさやニュアンスが欲しかった。パリス伯爵が若くって格好良いんでびっくり。スインヘッドのキュピレット公も格好良かったよん。で、キュピレット夫人とティボルトが愛人関係にあるのが良ーくわかる演出で、何故にあの格好良い夫を差し置いてティボルトなのか、何か事情があるんでしょうねー、ともやもや考えたくなるキャスティングです。そうそう、ティボルトはアルコール酩酊状態でマキューシオと喧嘩するんですよ。この辺りも夫人と関係もあってティボルトの不安定さが殺人事件を引き起こしてしまうことにつながっているってワケです。なかなか面白い演出です。ティボルトが死んでキュピレット夫人は嘆き悲しみ卒倒してしまいます。いやー、熱い演技でした。ふーっ。
バレエを観ていてフォルムや動きの美しさ、音楽との調和にうるうるする事は多いのですが、いくら物語バレエだとしてもそのストーリーに感情移入して涙が出るなんてことは私の場合ないのですが、今日は何か違いました。あれっ?ってな感じに涙が出てしまったのです。バルコニーのシーンでもそうですし、ラストの二人が命を落とすシーンでも。良く考えると別にストーリーに感情移入したんではないんですよね。きっと、これらのシーンが象徴する感情表現が私の心の琴線に触れたということなのだと思います。いやー、やはり、ノイマイヤーはすごいです。今日は劇場に行って本当に良かった。やっぱりハンブルクに行きたいな〜。