K-Ballet 2009 winter 2/28 マチネ

橋本さん、康村さんの「放蕩息子」が観たくてこの日を選びました。
橋本さん、良かったですよー。テクニックも充分だし、エネルギッシュで爆発系の踊りはこの作品の第一場にはぴったりでした。その後の召使いやならず者との場面はやんちゃな感じ。サイレーンとのシーンは意外にも大人し目でした。でも、それが却ってリアルでした。物の道理や自分の義務などわからない欲や衝動で行動してしまう若者が、そんなに堂々としてる訳ありませんから。熊川さんは好奇心が一杯で衝動に突き動かされながら、常にリーダーである風格がありました。
私はこの作品ではラストの帰還のシーンが好きなのです。ズタズタになって這うように家に辿りついて、しがみつくように父の身体を登り、最後に父に抱かれるシーン。あれは、ヅタボロ度が高い程、妙な感動があるのです。自らの放蕩を悔やみ、抜け殻のようになって戻ってきた息子とそれを向かい入れる父親の深い愛。そのズタボロ度に関しては熊川さんが上でした。ある意味、それまでの放蕩ぶりとのギャップが哀れみを誘うのです。橋本さんはまだエネルギーが残っている感じ。今回、一度だけの舞台ですから、きっとこれから踊り込んでいくうちに深みを増すのでしょう。
踊り手も観客も、どんな経験があって何を感じたかで作品の魅せ方、見え方が違ってくると思うのです。正直、私は心の底からこの演目が素晴らしいと思う程、この作品を理解できていません。ただ、今回、熊川さんの放蕩息子を観た時、私自身が経験したことがオーバーラップしてラストで思わず涙が出ました。自分でも驚いたのですけど。
聖書では、放蕩息子は次男で、長男は家を継いで真当に生きているという設定だそうです。当然、お兄ちゃんは勝手なことをして戻ってきた弟を受け入れる父親が理解できなくって文句を言うのだそうですが、お父さんから「一度失ったものが戻ってきたのだから喜びなさい」と諭されるとか。死んだと思っていた息子が帰って来たっていう理解で、父親にしてみれば、行方不明の息子が無事でいてくれればそれで良いという感覚なんですね。でも兄弟だとそうは行かない。同じものを持っていながら勝手をして自滅したのに何を甘えているのかとなる訳です。親の愛は物質を平等に分けることではなく、みんな幸せであることを願うということなのかな、と。なんかカインとアベルの話にも通じますね〜。
ピーターラビットはまた違うキャストでした。遅沢さんのジェレミー・フィッシャー、ダンディでした。ブラボー♪ ピグリン・ブランドの荒井さん、リズム感が良くて軽快でした。これからに期待大!ハリネズミの衣装ですが、お洋服からも針のような毛が突き出ているんですね。25日には気付かなかったな〜。
最後になりますが、産後2ヶ月で復帰の康村さん、相変わらず細い〜。艶やかさは健在で、舞台に戻ってきてくれたことがうれしいです。ジゼルも踊って欲しいですが、彼女のペースで全幕復帰のタイミングを選んで欲しいと思います。