K-Ballet 海賊

本日、初日でした。すっごく良かったです。海賊自体それほど上演回数の多い作品ではないので、新鮮な気持ちで見に行きましたが、Kヴァージョンは予想通り他のどれとも違う海賊でした。
私が見た事のあるのは、ABT、マールイ、記憶に新しいところでは昨年のマリインスキー。どれもそれぞれ違うし、どれがオーソドックスなんだかわかりませんが、テンポの良さはABTっぽく、でもストーリー展開がわかりやすく仕上がってました。音楽もきっとかなり違うと思います。振付自体も有名な洞窟のパ・ド・トロワ(コンサートではパ・ド・ドゥ)は見覚えがありましたが、ほとんどオリジナルみたいな印象でした。一幕にグルナーラとランケデムのパ・ド・ドゥがあってそれがエスメラルダの音楽だったりして、思わず「タンバリンは?」と突っ込みたくなった私です(笑)。ロイヤル仕込みのリズム感の良さと細かいステップは熊川節。それに今回はキャラクテールダンスが多く、エネルギッシュです。美術はヨランダ・ソナベントとレズリー・トラヴァースのおなじみのお二人によるものですが、私的にはくるみより好み。シックでありながらゴージャスです。
とにかく海賊って、踊りは楽しいけどちょっとストーリーが退屈で・・という印象を払拭するしあがりになっています。もちろんストーリーは大きく変わっているわけじゃないのですが、メドーラとコンラッドが恋に落ちる瞬間が描かれていたり、メドーラとグルナーラの絆が強いことがわかったり(姉妹って設定らしい)、細かい描写があります。ランケデムもコンラッドもアリも!たくさん踊ってストーリーを引っ張っていくのであきさせません。
カーテンコールもスタンディングオベーションに送られて幕を閉じました。うん、本当に素晴らしかった。
海賊のパ・ド・ドゥは熊川ファンのきっかけにもなった作品です。もう10年以上前かもしれませんが、ロイヤルオペラハウスで都さんと熊川氏が踊るのを見たことがあります。何かのガラでチケットがなかなか取れなくて当日券に並んで天井に近いような席から観たのですが、熊川氏の跳躍に会場がどよめいて独特の興奮を引き起こしたのです。遠くから観たはずなのに近くで観たような残像が残っています。私の目が彼をクローズアップしたのでしょう。他にもギエムがグラン・パを踊り、ダーシーとムハメドフが三人姉妹を踊った記憶があります。何とも豪華なガラ。でもその時私を魅了したのはクマカワでした。稲妻が走ったような衝撃とでも言いましょうか?熊川氏の踊りを観てゾクゾク来る時はそんな言葉で表現したくなります。
今夜の彼は、あの時の彼より洗練されていて、バレエを愛する一人の芸術家でした。あの稲妻のような、光った銀のナイフのような鋭さな弱くなった印象はありますが、あふれるエネルギーと強い意思が伝わってきました。天才だ、と改めて感じました。だってあんなの作っちゃうんですもの。
都さんは、身体が歌っていました。肩が、背中が、腕が、身体全体が雄弁に語っていました。彼女を観られることが幸せだと思います。もう一回彼女のメドーラを観る予定。きっと今夜より進化しているに違いありません。

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