BALLETS RUSSES

まずはキャストから。

12/28
Spectre de la Rose
LE SPECTRE Emmanuel Thibault
LA JEUNE FILLE Delphine Moussin

Après midi d'un faune
LE FAUNE Jérémie Belingard
LA NYMPHE Emilie Cozette

Tricorne
LE MEUNIER Jose Martinez
LA FEMME DU MEUNIER Marie-Agnes Gillot

Petrouchka
PETROUCHKA Benjamin Pech
LA POUPEE Clairemarie Osta
LE MAURE Yann Bridard
LE CHARLATAN Laurent NOVIS

狭い選択肢の中でたった1回の鑑賞となったバレエ・リュス。演目はおなじみなものが並んでいますが、「三角帽子」は全部観るのは初めて。ビデオでは観た事がありましたけど、ライヴではジョゼの粉屋の踊りしか見た事なかったと思います。
薔薇の精、ティボーは中性的な魅力があってぴったり。はずむ跳躍と柔らかなアームスの動きはイメージ通りです。オケの音が妙に古くさく重く感じたけど、評判ほど遅くは感じませんでした。ムッサンもきれいな踊りだったと思いますが、あんまり印象に残ってません(^^;。
ジェレミーの牧神、なかなか良かったです。表現がはっきりしていて動きの意味がよく伝わってきました。獣っていうより犬みたいなどこかカワユイ牧神でした。アニマル系ジェレミー似合ってました。コゼットのニンフは色気なし。固い固いつぼみのようでした。そこに魅かれる牧神というのもまあわからないではない・・ですが、牧神からの求愛を戸惑いながらも拒絶するニンフにエロスの芽生えを感じないのはやはり物足りないのでした。
三角帽子、もうこれは言うことなし。ジョゼもマリ=アニエスも恰好良すぎ。ドタバタ喜劇のようでもありますが、彼らのダンスがその場を圧倒してました。映像になるんですよね?これ。楽しみです。
問題はペトルーシュカなのでした・・・。はぁ〜っ。最後に思いっきりテンション下がりました。群舞も良かったし、バレリーナのオスタもムーア人のヤン・ブリも良かったんです。でも大事なのはやはりペトルーシュカなわけで・・・。全然悲哀が伝わってきませんでした。悲しそうにしてるのはわかるんですけど。表情とかじゃない身体で表現しないとダメなんですよ。笑いを取るような演技じゃなくて、心に何か突き刺さるような切なさが湧き上がらないとあのバレエは面白くないの。イレールのペトルーシュカと比べちゃいけないのはわかるけど、ペッシュ、全然わかってなかったと思う。彼を見てると色々な役をこなしているように見えるけれど、深い表現で心をゆさぶることってのがない。器用貧乏って言葉を思い出してしまう・・。今まで観た中ではティエリー・マランダンのペッシュinティッシュボックスの牧神の午後は良かったと思います。あれくらいストレートなテーマをうれしそうに一生懸命踊っている彼はちょっと変態チックで面白かったのです。ペッシュは良いものをいっぱい持っているはずなんですから頑張って欲しい。
これは想像ですが、彼はきっといろんな事に興味を持っていてバレエに限らず芸術的なものを観たり考えたりするのは大好きな人なんじゃないかと思います。ただもしかしたら知識先行のタイプ?例えば役柄を演じる時に従来の誰かがしたことや、典型的な何かに置き換えて理解してしまっていて、本当に自分の奥底からの理解を経てない気がするのです。人を感動させるには、自分の血や肉を通して表現する必要があるんだと思います。全ての感情を脳細胞の一つ一つが感じ、身体を通し表現するっていうか、、。
あるダンサーと話をした時、感じたことがあります。ある役柄を踊ったそのダンサー(ペッシュじゃないよ、日本人の女性ダンサー)を見て、私は彼女が表現するものがどうもその場にそぐわない気がして、何をしたいのかわからないように感じたのです。ただ確かに彼女はあるイメージを持って演じているのはわかるし過剰なくらいに演技していることは伝わるのです。終演後、出待ちで役作りが難しかったのではないかと彼女に質問したら、あっさりと「そんなことはない。○○○○のイメージで踊ったから」と言われました。確かに彼女の踊ったのは役名は違うけど○○○○でした。でも、どうしても私は納得がいかなかったんです。作品も違うし役名も違うのにそんなに簡単に他の有名なキャラクターを当てはめちゃって良いのかと。彼女は上手いダンサーで表現力もあります。でも私の心を打つことがなかったのはこれなんだな、とその時気付きました。不器用でも理解が遅くても充分かみ砕いて自分のものにしないと身体には吸収されないのです。ま、たかが出待ちのファンに大切なことを言うことはないかもしれませんから、彼女の言ったことをそのまま鵜のみにするのもどうかと思っていますが、私としては府に落ちた気がしたのでした。
ダンサーというのは大変な職業ですね。日々の行動や思考が全て踊りに現れるのですから。・・おそらくこういうことってどんな人間にも当てはまることなのだと思います。私も目の前にあることを本当に自分の頭で感じ、考え、理解し、細胞の一つ一つに浸透させているのだろうかと不安になります。でも少なくともそういうことを意識しながら生きて行きたいと思っています。