K-Ballet、第九、Symphony in C

6/12に観てまいりました。公演詳細はこちら
赤坂サカスの杮落としで行われた第九。正直、狭い舞台にオケ、合唱の方たち、ダンサーがひしめき合ってごちゃごちゃしてたし音楽も薄っぺらで、初演の時は熊川さんの復活ってこと以外はあまり良い印象がなかった作品。Kの新しいレパートリーになるSymphony in Cの方に興味があってオーチャードに向かいました。
Symphony in Cは、第1〜4楽章まで中心を踊る女声ダンサーの競演が見どころ。祥子さん、康村さん、東野さん、浅川さんというキャスティング。やはり中村祥子さんの存在感と音楽性が素晴らしく他とは一線を画していたという印象が残りました。康村さんにも注目していたのですが、復帰後間もないせいか彼女独特のねばっこいようなタメのある動きが見られず、まだ本来の調子を取り戻してないようでした。でも相変わらずスリムで産後とは思えない!きっとこれから彼女の”私を見て”オーラが復活すると思うのでこれからに期待したいと思います。東野さんは先日のジゼル代役効果か、落ち着きと華を身に付けた印象を受けました。ロイヤル仕込みのアレグロの動きに、単なる可愛らしさだけではない趣が感じられました。やはり経験が成長させたのでしょうか。浅川さんは成長を感じさせるダンサーですが、今回は残念ながらキラリと光る何かを感じることができませんでした。踊りこなしていないのか、フォルムが大事なバランシン作品なのにちょっとした腕の動きとかに雑な感じがありました。ポテンシャルは充分あると思うので頑張って欲しいです。そして欲を言えば、群舞の方たち、もう少しラインのきれいなダンサーをそろえていただきたいと思いました。
第九は、舞台環境が初演時より良くなったのでサカスヴァージョンよりは妙なストレスはなかったです。音楽そのものも楽しめました。しかしですね・・。ここから辛口になっちゃいますが、振付そのものが面白くない。音に合わせて動いてはいるのですが、フォーメーションも単調だし、動きそのものも泥臭い。そもそもコンセプトが説明的すぎてしまって観客の感性に委ねる部分が少ないように感じます。舞台美術や衣装も装飾過多の印象が残ります。・・そうなのです、作りすぎと感じてしまいました。さすがに第4楽章は音楽の力が大きく、熊川さんの登場するせいもあって盛り上がりました。衣装も第4楽章が一番良いと思います。照明も自然だし。遅沢さん、宮尾さんの長身コンビものびのびと踊り、ここにはKの個性を感じました。
それにしても圧巻なのは熊川さんの存在です。振付がどうの、好みがどうのとかそんなものどうでも良くなってしまいました。熊川哲也が踊る、それだけでこの公演が成立し、観客が明らかに彼のオーラの中に取り込まれ、魅了されていくのです。観客の興奮は通常のバレエ公演には見られない一種独特のものです。いつも感じることですが、熊川哲也の意思の力で、観客の心というか、脳の反応そのものを鷲掴みにしていくのです。これだけの個性の持ち主はなかなかいません。
熊川さんの素晴らしさを改めて感じたのと同時に、第二の熊川は絶対生まれないという寂しさを感じた夜でした。